九段下
2004年4月2日九段下から、上までの坂をするりと登るには、今日は体が重い
登った先にいくつか急ぎの用事を片付けに行く
懸念のことが頭を占めていた
桜と人とあたたかさの群れに、ああ、そうだったと、
今日が異様に「花見日和」だということに気づく
遠足衣装の花見客が連なる
桜の並びに目をやった途端に
何故か「ひどい」
という言葉が衝く
何が「ひどい」というのか
自分でも分からない
堀に落ち込むような緑の壁に
菜の花の黄と花大根の紫
そして桜
桜が掘りの底を覗き込んでいるように見える
花びらが水面の隅にたまり、遠目にプランクトンのようで
そこが深い坩堝に見える
武道館、田安門入り口付近の桜が
黒い幹をねじり、薄桃色を頂いて、降り散らしている
ねじりながら生きてきた様子に見える
桜の幹は黒いんだな
お天気も申し分なく、桜もその香でむせぶほどの処で
こんなに黒い黒い印象がつらなる自分がおかしいように思え
周りに目をやる
歩道橋の真中で、おそらく好きあっているんだろう二人が立ち止まり
心がゆくまま、桜の連なる景色を指差し
笑顔だ
ほら、笑顔
今この情景に居ても、顔がほころばない状態なのね、自分
武道館を過ぎた先
インド大使館の隣に「花田」という陶器屋がある
白州正子ゆかりの店だと、大分前に店主らしい男性から聞いた
最近の作家のものを扱っているが、
しっかり息の長いだろう作品を置いている
普段は客が店内にいることのほうが少ないこの店も
今日は花見客でいっぱい
「桜もの」も多い
客の出入りが多いおかげで、
入り口のガラス戸から、店内に花びらが舞い込み
焦げ茶の敷板の床を飾る
まるで、これを見越して作られたかのような景色
人は多いが、集中して、集中して
2月に籍を入れた大学の同期とその奥さんへの寿を選ぶ
「物」との対話になる
気持ちいい
選び終え、ゼミ関係の手続きを済ませにその先へ
世話になった事務局の先生
いたずらっぽい顔と困ったような顔を時々見せる50代男性
また研究科卒業生と同等の現場を持つ人たちが集まり
人数が達すればゼミが開ける
そこに居る人のことも居ない人のことも
人が、きちんと人として扱われる場を構成できる教授のゼミ
続けられるのは助かる
外で仕事を片そうとしたが、
どこも人でいっぱい
おとなしく家に帰る
研究科2年間の修了証が届いていた
思っていたよりも立派な証書
前の2科を入れ、全6年間の最後の2年を終えたのか
遠くまで来た
さて
次に行く場所は
どんなものにできるか
という前に明日の段取り、詰めないと眠れない
淡々と
淡々と
黒い幹が
立ち続けるように
薄桃色が
降り続けるように
淡々と
淡々と
掃除もして
明日は金沢の彼女が泊まりに来る
段取りをして
淡々と
淡々と
湯船で眠る
そう言えば
一昨春
ボートの上で
自分も水の波の揺れになって
桜を水平から見上げることを
し始めた人がいる
自分に向かって振ってくる花びらは
何をその人に降ろすんだろう
淡々と
降りてくるものを
受け取っているのかもしれない
言葉以前のところで
そうして
起き上がる
登った先にいくつか急ぎの用事を片付けに行く
懸念のことが頭を占めていた
桜と人とあたたかさの群れに、ああ、そうだったと、
今日が異様に「花見日和」だということに気づく
遠足衣装の花見客が連なる
桜の並びに目をやった途端に
何故か「ひどい」
という言葉が衝く
何が「ひどい」というのか
自分でも分からない
堀に落ち込むような緑の壁に
菜の花の黄と花大根の紫
そして桜
桜が掘りの底を覗き込んでいるように見える
花びらが水面の隅にたまり、遠目にプランクトンのようで
そこが深い坩堝に見える
武道館、田安門入り口付近の桜が
黒い幹をねじり、薄桃色を頂いて、降り散らしている
ねじりながら生きてきた様子に見える
桜の幹は黒いんだな
お天気も申し分なく、桜もその香でむせぶほどの処で
こんなに黒い黒い印象がつらなる自分がおかしいように思え
周りに目をやる
歩道橋の真中で、おそらく好きあっているんだろう二人が立ち止まり
心がゆくまま、桜の連なる景色を指差し
笑顔だ
ほら、笑顔
今この情景に居ても、顔がほころばない状態なのね、自分
武道館を過ぎた先
インド大使館の隣に「花田」という陶器屋がある
白州正子ゆかりの店だと、大分前に店主らしい男性から聞いた
最近の作家のものを扱っているが、
しっかり息の長いだろう作品を置いている
普段は客が店内にいることのほうが少ないこの店も
今日は花見客でいっぱい
「桜もの」も多い
客の出入りが多いおかげで、
入り口のガラス戸から、店内に花びらが舞い込み
焦げ茶の敷板の床を飾る
まるで、これを見越して作られたかのような景色
人は多いが、集中して、集中して
2月に籍を入れた大学の同期とその奥さんへの寿を選ぶ
「物」との対話になる
気持ちいい
選び終え、ゼミ関係の手続きを済ませにその先へ
世話になった事務局の先生
いたずらっぽい顔と困ったような顔を時々見せる50代男性
また研究科卒業生と同等の現場を持つ人たちが集まり
人数が達すればゼミが開ける
そこに居る人のことも居ない人のことも
人が、きちんと人として扱われる場を構成できる教授のゼミ
続けられるのは助かる
外で仕事を片そうとしたが、
どこも人でいっぱい
おとなしく家に帰る
研究科2年間の修了証が届いていた
思っていたよりも立派な証書
前の2科を入れ、全6年間の最後の2年を終えたのか
遠くまで来た
さて
次に行く場所は
どんなものにできるか
という前に明日の段取り、詰めないと眠れない
淡々と
淡々と
黒い幹が
立ち続けるように
薄桃色が
降り続けるように
淡々と
淡々と
掃除もして
明日は金沢の彼女が泊まりに来る
段取りをして
淡々と
淡々と
湯船で眠る
そう言えば
一昨春
ボートの上で
自分も水の波の揺れになって
桜を水平から見上げることを
し始めた人がいる
自分に向かって振ってくる花びらは
何をその人に降ろすんだろう
淡々と
降りてくるものを
受け取っているのかもしれない
言葉以前のところで
そうして
起き上がる
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