「湖のほとりで」

2008年5月2日
いいものを観た

たまたま昨日になって突然「観に行けなくなったから」と友人から譲り受けたチケットだった

イタリア映画祭
アンドレア・モライヨーリ初長編監督作品
「湖のほとりで」

ミステリーと銘打っているが、観ているうち、観終わってからも、これがミステリーだったことはいつの間にか忘れている
ただただ静かに、人が生きてることの真実を、丁寧に、大切に綴っている
そんな印象

人をたやすく批判し、疑い、見下す自分の浅はかさをも見せられる

映像も美しいが
人の美しさが映されている

この作り手は、すべての人を慈しんでいると感じられる

愚かな人も、病んでいる人も、罪びとも、美しい人も
大切に描き出している

映画を観ながら何とも言えない柔らかい暖かさが、胸のあたりに生まれていた

上映前にも挨拶に出ていた監督が、終演後も質問を受けに登場した

質問はないが、観て感じたものを伝えたいと思い、実際にはそうはできなかった

帰り際、出口へ向かうエスカレーターの乗り口の横で
モライヨーリ監督が3,4人の人にサインや写真撮影を求められていた

素敵なものを観せてもらった感謝を伝えようと近づいて、反射的に自分も何かサインしてもらえるもの、と鞄の中をあたるが、

目の前でサインや写真を求められている監督が、どこか搾取されているような疲れた様子に見え、それはやめた

つたない英語で、半分通訳さんに手伝ってもらいながら「あなたはすべての人を愛しているように感じた。罪を犯した人でさえ。すてきな作品をありがとう。あたたかかった。」
日本語でこう書いてしまうと、えらく大雑把に思えるけれど、真意は伝わったと思う。

顔を近づけて、一生懸命聞いてくれていた。
「作り手が伝えようとしたことを感じ取ってもらえて嬉しい」と言ってくれた。
握手をした手は、やはり存在感のある暖かさだった。

この人がまた次にどんなものを作るのか楽しみ

こういう作品が口伝でロングランになるなんて、イタリアも素敵な国だ(単純(笑))

「湖のほとりで」の前に上映された短編「代理教師」も
素っ頓狂な出だしに目を丸くさせられたけれど、愛らしい作品だった
こちらも、わたしたちがどうやってこのこころを大切に、守れるのかが見事にくっきり描き出されていて、すてきだった

どちらも今の自分に用意されていたかのようにフィット

よい出会いでした

夜、チケットを譲ってくれた友人にお礼と報告の電話

観逃した彼女はくやしがっていたが、チケットが無駄にならずに済んだことにもお礼を言われた

静かに暖かい日

  

  

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